カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第69回

清ちゃんのつぶやき(その56)硬い話、やわらかい話(その1)



 新モデルが入荷してくるようになった。少し気になるのがハンドルバーとステムのクランプ。バーが大径化してきているモデルが増えてきた。フレームパイプが太くなり、ヘッドが太くなり、ヘッドパーツも隠れてしまった。単純に、次に来るのがハンドルバーかなと思っていたら、案の定である。自転車自体がものすごく丈夫になってきている。小さなフレームでさえも同様である



 丈夫な自転車の何が悪いの?と思われる方もいるかもしれない。悪くはない、ただ、弱い部分も必要なのである。クルマを見ても分かるが、ぶつかったら壊れる部分があるからこそ乗員を守ることができる。今の自転車、事故っても壊れにくい、その分、人間が放り出されダメージを負う。これはスポーツ車だけではない、通勤通学に使われている一般のアルミフレームの自転車にも言える。先月も事故でフレームが曲がるのではなく、折れた(割れた?)のを見た。本人は病院である。



 今の傾向、二つの原因が考えられる。一つはヨーロッパのレースの激化。丈夫であれば、踏んだ力をダイレクトに路面に伝えることができる。集団ゴールの激しさでは本当にそんな自転車が必要なのである。ドイツ人やオランダ人が、あのでかい体で渾身の力を出すのなら、今のものでもまだまだなのかもしれない。



 二つめは別の方向からである。日本でもその傾向が出てきているが、一部の消費者がうるさい。ちょっとぶつけただけで曲がったとか、些細なことでクレームをつけてくる、自分で当てておいて、買ったばかりでフォークが曲がって乗れないから自転車を無償で交換しろとか言ってくる消費者がいる。消費者保護法等で世間がうるさくなっているご時世、本来、乗員を守るためにあるものが違う方向に向いている。そのため、クルマでも車体は少し強くして、エアバッグで乗員を守るようになってきていると聞く。



 自転車はむき出しである。どこまでの強さが必要なのかは意見の分かれるところであるが、過剰な強度は乗り手にストレスを与える。同じパイプ、同じ部品であればフレームが小さくなれば、強くなる。小さい人に、より丈夫な自転車が供給される事になる。大きなフレームとそうでないフレームは、本来パイプ厚や部品も替えて対応しなければならない。ただ、コストや管理上、難しい面も多い。これがメーカーの課題でもある。



 レースでは体格のいい、そして鍛えあげられた選手のパワーを受け止めるために必要なものが、これから自転車に乗ろうかとする初心者にどこまで必要なのか、そんな点も考えた自転車作りが求められてくる。

第70回へ続く...

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