カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第345回

清ちゃんのつぶやき(その288) 自転車賛歌



 ついに「清ちゃんのオーバーホール日記」も最終回を迎えた。何度も書くが、本当に皆さんのご支持のおかげでここまで続けてくる事ができたと思う。今は感謝の言葉しか思いつかない。



 さて、これまでいろんなお便りを、いろんな方から頂いたが、勉強になるとか、なるほどなぁと思った、それに、考えさせられたと云った感想もあった。何がどう勉強になったのかは分からない事が多いが、このブログで言いたかった一つが、実はその点である。つまり、モノを考えると云う事、ある意味“賢いサイクリスト”になって自転車の楽しさを、より味わってほしいと云う事も目的の一つであった。ただ、漫然と自転車に乗っているだけでも楽しい。でも、いろんな知識を得、技術を身につけていくと、もっと楽しくなってくる。



 世の中、様々な情報が、昔に比べると溢れ過ぎている。これを取捨選択するのはその人自身である。以前にも何度か書いたが、雑誌やインターネット情報を鵜呑みにしない事も重要である。誤った情報を信じて不便な思いをするのか、正しく情報を得て楽しみを得るのかは、その人自身である。その為にも考える力や学ぼうと云う姿勢を養ってほしいのである。このブログでは、そのための問題提議と云う意味合いもあった。



 一例をあげると、少し前に、ある人がペダルを替えたが、上手く足が入らないと云った事があった。これまでビンディングペダルを長年使ってきた方である。持ち込まれた自転車を見るとスピードプレイ・ゼロである。ご存じの通り、同ペダルにはスプリングの強弱調整ネジはない。見た途端、「それじゃ入りにくいですよ」と言ってしまった。私も初期タイムペダルで経験したが、体重がない人間にとっては入れるのに大変である。体重50kg以下だと、えぃっと気合と全体重をかけて押し込まなければ入らない。



 設計そのものが欧米人選手を対象としてある。いろんなコメントでは軽量で着脱も簡単と云う意見が載っていたそうだが、それはあくまでも体重がある人の場合であって、小柄な人のコメントなんて載っていない。このように他の人がいいと言っても、自分にとってはどうなのかまで考えてほしい。人によって、いいものは違うのである。ある人が、某店のラーメンは美味いよと言っても、自分にとってはそうでもない事もあるし、本当に美味いと感じる事もある。



 空気圧もそうである。タイヤに8気圧とか表示してあったとか、店員が8気圧入れろとアドバイスしたとか、先輩が言っていたとかの事例は多い。はたしてそうなのか?このブログでも、お便りからその誤りに気がついて快適な走りを得た人も多い。先ず使っているタイヤの種類やサイズ、それに乗る人の体重、走るコースによって空気圧は変化していく。極端な話、23Cタイヤで体重50kgの人が8気圧も入れて荒れた路面を走って快適な訳がない。跳ねたり、グリップしなかったりで、走りにくいはずである。いつも一つ覚えみたいに高圧で入れなくとも、時々、空気圧を変えて試してみればいいと思う。低いと思ったら携帯ポンプで補充すればよい。



 話しは変わるが、以前328回で紹介したアンカーだが、その後、トリプルギヤに変更する事になった。当初、フロントディレーラーも替えなければいけないと思ったが、コンパクトギヤに付いているものをよく見ると、ひょっとして?と云った考えが出てきた。とりあえず、チェンホィルだけを交換した。歯数差が22Tある。ところが懸念していたインナー・トップ時にディレーラーの羽下部にチェンが当たる事もなく、見事に変速する。メーカーカタログ上ではできない事になっているので、ついフロントディレーラーも交換しなければと考えがちだが、思い込みをせず、試みてみるといった事も必要なのかもしれない。不要な出費を防ぐ事もできる。



 よく雑誌の特集で“失敗しない○○選び”とかの記事等あるが、失敗と云うのも大切な経験である。失敗する事から学んでいく事だって多い。よほど考えない人でなければ失敗から学び、それを次に生かすようになる。いろんな事を試みると云うのは重要な事であり、他人と一緒だからそれでいいというものではない。フォームもそうで、同じ身長、体重だからといって同じサドル高さ、同じ寸法のステムやハンドルバーでいいのかと言えばそうではない。その人の体力やくせ等様々な要素があり、この身長ならこの寸法などと一概には言えないのは理解できると思う。



 そのように、人によって機材としての自転車は同じパーツを使っていながらも違う。他人が何と言おうが、本当に自分に合った自転車は何かを追求していく事によって、快適な走りを得る事ができる。何時間も乗っていても疲れが少なく、より遠くの見知らぬ土地まで行く事ができるようになる。走っている間は自転車の事など全く忘れていると云うのが理想である。



 自転車のパーツに関しても、例えば何か新製品が出てきたとする。極端な話、何もなければ新しい製品を作る必要はない。そのままの形で売っていればいいのである。高額な費用をかけて、新しい金型やラインを組む必要はない。何かがあったから新製品が出てくると思って間違いない。単に外観デザインが飽きられてきたと云ったものならともかく、リコールまでは至らない欠陥があったとか、そのメーカーにとっては画期的な事を考え、そこに行くためのステップの新製品と云う事もあり得る。いきなりやると市場から拒否反応がでてくる事もある。そうした製品の裏にある秘めたメッセージを読み解いていくのも面白いかと思う。



 ともかくも、自転車と云う道具を通して我々はいろんなものを得る事ができる。それが自分自身の体の健康であったり、知らない人との仲間意識だったりする。自転車でなければ得られない旅行体験もある。メカ好きな人にはいじる楽しみだってある。走りやメカでいろんな人と知り合い、輪が広がっていく事も多い。知識や経験が増えていくと自分一人では分からなかった事も分かるようになり、心が豊かになっていく。本当に素晴らしい事ではないだろうか?職業や年代を越えた交流もできていく。私自身、自転車に乗っていなかったら知り合う事もなかった人達も多いし、いろんな事を学んできた。これからもいろんな事を学んでいきたいと思う。とにかく自転車って本当に素晴らしい。



 長々と書いてきたが、そろそろ「蛍の光」が流れてきたみたいである。345回もの長き間、本当にご愛読頂いてありがとうございました。ここに改めて皆様に感謝の意を表したいと思います。この間、いろんな方々と様々な意見を取り交わすことができたと云う事は私自身にとっても財産になっております。ブログ自体は終わりますが、もし、何かあって、私への連絡をとりたい方はお便り欄、若しくは玉名店に連絡を入れて下されば幸いです。



 ひょっとしたら、来年あたり、日本のどこかで、これまでの写真にあるオレンジのランドナー、若しくは白色のトーエイ(フロントサイドバッグ仕様)で走っている自転車乗りを見かけたら私かもしれません。その時は声をかけて下さい。自転車談義でも致しましょう(笑)。それではまた、どこかで皆さんとお会いしましょう。それまで元気に、そして楽しく自転車に乗っていて下さい。このブログが皆さんのサイクリングライフに少しでもお役に立てた事に改めて感謝しております。



 (清ちゃんのオーバーホール日記  完)




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