カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第336回

清ちゃんのつぶやき(その279) スマートコントロールブレーキ



 春需の真っ最中である。もし、スポーツ車等で相談事があるのであれば、4月の入学式以降の方がゆっくり話しができると思う。さて、今回は知られざる(?)ブレーキの話。



 我々のように一般車からスポーツ車まで扱っている店だと、時折、あれっと云うような思わぬ発見をする事がある。今回のものは1年程前に販売した子供乗せ専用自転車の事である。先日点検に入ってきた。ブリヂストンのアンジェリーノと云う自転車に装着されている前ブレーキの話である。これを御覧になっている方々にはあまり馴染みのない商品かもしれない。



 数年前に新規格で3人乗り(大人と幼児2人が乗れる)自転車が認可された。幼児2人を前と後ろに載せて走っても安定するように作ってある。運転するお母さんと子供2人の体重と合わせるとへたをすると100kgを超える。それで、そこそこの速度で走り、止まろうとするとかなりの制動力が必要となってくる。少し下っている坂などでは速度も上がり気味になる。加速度は質量の二乗に比例していく、軽いロードとは全く違った加速感がある。



 自転車そのものの重量も100kgの重量を支えるために20kgを超える。重たいから大変と思い、楽に走ろうとして、電動バージョンにすると30kgをゆうに超える(笑)。100g軽量化するためにン万円はたく人達とは別世界の自転車である。そんな自転車を素人であるお母さんが運転するのである。微妙なブレーキコントロールができる人達ではない。二輪車は前ブレーキの方が制動力がある。素人が使っても安心して使える前ブレーキと云うのが必要になってくる。その結果として生まれてきたのが今回のブレーキだと思う。



 このブレーキ、ただものではない。外観は一見、Vブレーキのような形をしているが、よく見ると中間にピボット、それに倍力装置みたいなものを組み合わせてある。Vブレーキみたいだが、センタープル、いや正確にはセンタープッシュと言った方がいいかもしれない。アウターの先端で裏に隠れた小さなパンタグラフを動かす。アームも支点から作用点までの距離があり、効果はあると思う。



 何度かブレーキレバーを動かしながら、以前にどこかで見たような動きをする、しばらく考えていたが、はたと気がついた、そう、カンパのデルタブレーキである。これを作った人はあれこれ考えたのだろうなぁ等と想像する。この効果的なブレーキ、発売当時はカタログのどこにも載っていなかった。普通なら“○○ブレーキ”と謳い、その特徴や効果の説明書きがあるのだが、このブレーキに関しては何の記載もなかった。最近のカタログでは“スマートコントロールブレーキ”と謳っている。



 構造は複雑だが、軽量化してMTBあたりに使うと面白いかもしれない等と考える。スポーツ車好きな人も、時には、街角に停めてある子供乗せ自転車を観察するのも新発見ができるかもしれない。ちなみに26インチ車の車輪、電動自転車の一部にも見る事ができるが、なんと650Bである。昔のランドナーと同じサイズ、こんなところで生き残っているとは思ってもいなかった。



第337回へ続く...

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