カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第262回

清ちゃんのつぶやき(その211)栗の木峠



 栗の木峠に行ってきた。栗の木峠、熊本県ではない。長崎県佐世保市と佐賀県伊万里市を結ぶ峠である。今はトンネルができ、さして苦労もせずに互いの市に行けるようになった。トンネルが出来る前は皆、有田を経由していた。栗の木峠は当時も通るクルマがほとんどなく、地元車両しか走っていなかった。当然、未舗装路で幅も狭く、雨が降った後などは登るのに苦労していた。佐世保に住んでいた頃、ロードレーサーでは弓張岳、ツーリング車では栗の木峠によく上っていた。もう、かれこれ40年程前の事である。自分自身のお気に入りの峠の一つだった。



 行こうと思ったきっかけは、夏に伊万里市在住のYさんからお便りをもらった事による。ランドナーのタイヤについての話だったが、返信のメールに、栗の木峠によく行っていた事を書いた。返信にはよくあんな峠道を・・・と云う事を書いてあった。その後、数回のやりとりがあり、峠から伊万里側は工事中で通行止めになっている事も知った。それでもまだ道が残っているのなら行ってみたい、そう考えるようになった。その後、伊万里側の工事が終わったとのメールも頂いた。



 今の季節だったら快適だと思い出発した。佐世保市街地から柚木方面に向かう。本当に久々である。ホームセンターやコンビニができ、昔とは違った光景がある。左手に川を見ていくと徐々に田園風景に変わっていく。辺りでは稲刈りの真っ最中、黄色く色付いた稲穂が本当にきれいである。道もトンネル開通のおかげで勾配はきついものの、広く路面もきれいになっている。フロントギヤ全部を活用して上る。



 長崎県側の最終集落が潜木(くぐるぎ)である。世知原方面にも道ができ、様変わりしているが、ここからは旧道、昔っからの道である。妙な懐かしさを覚える。道幅も狭くなり、急に森の中の風景に変わるが舗装されている。何となく記憶も少し甦ってきた。途中、何度か勾配がきつくなりインナー28Tを使うもののそれでもきつい。何度も上った道なのにこんなにきつかったのかと今になって思う。それでも何とか坂の頂上に辿りついた。



 お地蔵さんに湧水、まるで絵に書いたような峠の風景があった。野仏とちょろちょろと流れる水だったのが、今は屋根付き堂になり、湧水を溜めるところまで出来ている。有田側の景色も見渡せるが、昔はもっと見晴らしが良かったような気がする。それにもっと荒涼なイメージがあった。古いアルバムには当時の写真がたくさん残っているはずだが、今度探してみようかと思っている。






 峠では先週のお約束通り、湧水を沸かして一人、コーヒーを飲んだ。鳥の鳴き声と風の音、のんびりとした時の流れを満喫した後だが、伊万里方面にはゲートがある。自転車なのでちょっと担げば通れないことはない。ただ、下り途中で道が崩れていたりしていて、また同じルートを上って引き返すのはつらい。結局、世知原方面への旧道を走り平戸へと向かう事にした。峠を後にする時、お地蔵さんが「また、いつでもおいで」と背後から囁いてくれていたような気がする。



第263回へ続く...

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