カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第254回

清ちゃんのつぶやき(その203)南阿蘇湧水巡り



 お盆を過ぎてから、よくしたもので朝夕に秋の気配を感じられるようになった。ところが昼間はまだ暑い。休日にバイクやクルマの洗車をやるだけでも汗びっしょりになる。一仕事終え、シャワーを浴びながら考えた。よし、洗車やシャワーの水の源に行こう、阿蘇だ!(結局、何らかの理由をつけて、避暑のために休日は阿蘇に行ってしまう)






 熊本市の水道は全て地下水で賄われている。全国でも珍しい都市である。そう、我々はミネラルウォーターで洗車したり風呂に入っているわけである。何とも贅沢なことをしている。熊本に来て初めての年、水道水が夏には冷たく、冬には暖かい事を経験した。東京では必需品だった瞬間湯沸かし器が要らなくなった。阿蘇の山や草原に降った雨が長い年月を経て湧水となり、あちこちに湧き出ている。それが田や畑に使われ、更に地下に浸み込み巨大な地下水槽となり熊本市民の水道水となっていくのである。






 阿蘇一の宮町では街中のいくつもの商店の前で湧水を自由に飲んだり、手や顔を洗ったりできるようになっている。湧水を使った菓子や料理も提供している。先日の久住その2の口絵写真、愛嬌のある湧水も一の宮の町外れ、豊後街道沿いにある。今回行ったのは一の宮とは山を挟んで反対側にある南阿蘇方面である。こちらにも有名な白川水源がある。ただ、有名過ぎて観光客が多い。近くには、この他に10か所もの水源がある。暑い夏の日差しを受けながらそれらを自転車でまわった。






 場所によっては数百メートルしか離れていないという、自転車だと移動に、ものの数分といった所もある。面白いのが泉質で、数百メートルでも微妙に味が違う。温泉と同じである。場所も神社の中とか畑の側とか住宅に囲まれてとか、いろいろ面白い。元を糺せば、水の湧き出ている所に神社を作りとか、湧き出る水を田畑に引いて、湧き出る水の近くに家を作ったというべきなのだろう。実際、上水道が出来るまでは水汲場、洗濯場と槽が分けて作られ、今でもまだ利用されている所がある。流れ出た水は阿蘇の田畑を潤す。いい米や野菜ができる訳である。それにしても贅沢である。



 水源で滾々と砂を吹き上げて出てくる水を見ていると気持ちが爽やかになってくる。腕を浸していると、じんじんするくらいに冷えてくる。飲んでも美味い。木陰にいるだけでひんやりしてくる。中には水源が南阿蘇鉄道の橋の下にあったりする。この大自然の恵みを直接、間接的に受けている我々は本当に幸せ者だなあと感じる。



 各水源までには案内板もあり、説明文もあったりする。本当にこの点、熊本県は親切である。昔の道の四つ角には低い石が埋め込まれていたりする。案内表示石である。昔は阿蘇谷の中で迷い、方向を見失い亡くなった人が多かったと聞く。そこで個人でいろんな分岐点にこのような石を設置したといった事が書いてある。阿蘇の冬などは旅人も大変だっただろう。夏の暑い日差しの中だとピンとこないかもしれないが、ひんやりした水源横で落ち着いて想像するとよく分かる。今日はたった20kmを4時間以上かけて走った。



第255回へ続く...

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