カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第252回

清ちゃんのつぶやき(その201)耐久性 その2



 一月程前、新しい自転車を買い、それまで乗っていた古い自転車を置いていかれた。本当に一般的な、昔の買い物用自転車である。この後に自転車処分業者の下に行って処分されるわけだが、見ていて何か考えさせられた。昔のものって耐久性があったよなぁ・・・。自転車は所謂、工業型、ブリヂストンとかミヤタのものではない。大阪の商業型メーカーの商品である。自転車製造業が衰退してしまった今では工業型とか商業型とか言っても死語になってしまったが、当時は商業型と言えば二級品だった。



 そんな自転車でも今見るとよくできていたなぁと感じる。今と特に違うのが耐久性への考え方である。材質等の問題もあるが、肉厚パイプやステンレス部品、確かに今のものに比べれば重量はあったが華奢なものではなかった。現在のようになってしまった背景には私自身、深く関わっていた。今、思うと多少の後悔の念もあるが、それも時代の流れだったのかもしれない。



 今回の自転車、本当に時代を感じさせる、ホィールサイズが23.5インチ。今では聞かないサイズである。22インチのリムに1-3/4のタイヤを付けてそう呼んでいた。24インチじゃ少し大きい、でも22インチじゃ小さすぎる、そんなユーザーのために作られたものである。そこそこ各メーカーで作られ、市場には出回った。ミニサイクルと呼ばれ一時期流行った時代がある。そんな頃の自転車である。壊れてしまってはいるが、ツインライト(左右にライトがある)、コッタードクランク(コッターピンのカバーも当時としては洒落ている)が装備されている。



 チェンケースを見てもらえれば判るが、今のものと比べて大きい。先の軽快車の項の写真も合わせて見てもらえれば判ると思う。一つにはフロント、リヤ歯数が大きいのが原因である。フロントで46Tくらい、リヤで16から20Tくらいだった。ミニサイクルだとリヤは少し小さめに設定されていた。シングルギヤでは歯厚は3ミリもあった。もちろん、それらを覆うチェンケースも一回り大きくなる。これをスマートに見せる方法はないか等と考えたあげく出てきたのがトランスミッション部のコンパクト化である。



 同じギヤ比なら小さい歯数のものを使えば小型化できる。チェンケースも小さくなって見栄えもよくなる、重量面でも軽量化できる、表向きの理由はそうだった。実際は別の理由もあった。材料費の軽減である。チェンリングで云うならば、一枚の大きな鉄板からとれる数が増える。その分コストを抑える事ができる。シマノから出たばかりのシングルフリーハブと組み合わせればそれが可能になる。時を同じくして某大手自転車メーカーも同じ事を考えていた。話はすぐにまとまり製品になっていった。



 今のシティサイクル、ママチャリを含めてほとんどがフロント31Tか33Tになっている。この数字を見て気付く方がいるだろうか?奇数になっている。理由を説明すると長くなってしまうので今回は省略するが、フロントを小さくすることにより耐久性や踏み出しの軽さは犠牲になる。それも充分承知していた。JISやメーカーの耐久試験にはパスするだけの品質や耐久性は持ち合わせていた。こんな流れがあったためにその後のMTBにもトランスミッション部のコンパクト化が流用されていった。



 今のロードのようにギヤ比を下げるといった目的ではないコンパクト化、自転車の耐用年数の考え方が変化していった頃である。駅前には放置自転車、盗られたり回収されたりしたらまた買えばいいといった世の中の風潮、自転車が使い捨てみたいに考えられていった頃の事である。その後、ハンドルなども純ステンレスからステンレスの薄い膜を鉄パイプに巻いた(クラッド管という)ようなものになっていく。当初はスマートでかっこいいシティサイクルを安く作る方法がないか等と進めていった結果がある意味、そのような風潮を招いてしまったのではないかという気も、数十年経った今でもする事がある。



第253回へ続く...

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