入学式も終わり、春需のピークを過ぎ、やっと少し落ち着きを取り戻してきた。この間、いろんなお客さん達から頼まれ事をしていた。自転車納品も「落ち着いてからでいいよ」とか、改造や部品交換依頼等も「ピークを越してから自転車持ってくるね」とか言って下さる。こちらの事情を分かってもらい、その度にありがたく感謝、感謝である。これに応えるために春需の残務処理と並行して自転車の組み立てや改造に必要な部品の注文や加工の作業を進めている。 |
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ところで写真のものが何か分るだろうか?一般の人はまず目にしないものである。これらは自転車の梱包に使われるもので、完成車になるまでにゴミ箱に入ってしまう、そんなものである。種類はいろいろある。フロントフォークエンドが痛まないようにエンドに挟んであるもの、シートピラーが入る部分の保護、さらに両車輪のハブシャフト等部品の保護キャップである。この他にもフレームを守るためのビニールや紙類、発泡スチロール、各部品がずれたりしないように固定するタイラップ等が多数ある。 |
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これらのおかげで運送中に箱が放り投げられたりしても商品にはダメージを受けないようにしてある。最近は少なくなったが、以前には箱が潰れていたりしていた事もあった。それでも中身の自転車は無傷だったこともある。言わば陰の功労者である。捨てたりする時によく思うことがある。それはこのようなものでも設計者がいて、寸法や材質、コストまて考えているんだなあといった事である。 |
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例えば、エンドに噛ませるにしても、ちょっとの衝撃で外れては意味がない。そのためにはコンマ単位での寸法を出さなければならない。更に材質までも考慮していかねばならない。硬いと衝撃で割れてしまうし、柔らかいと衝撃に耐えきれず、めり込んで商品を傷めてしまう。硬過ぎず、柔らか過ぎず、適度な材質を要求される。 |
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勿論、コストでも悩まされていると思う。いい材質のものがあっても所詮捨てられる身、メーカーからは1円、いや1銭単位で値下げを要求されるだろうし、低価格を意識して材質を選ばなければならない。同じリサイクルの材質でもその業者によってばらつきがあるだろうし、そのためにはいくつもの業者と折衝しなければならない。金型も当然要る。精度やコストとのバランスも考慮しなければいけない。ただ、一般の製品と違い、金型の研磨や製品の表面仕上げ等には気を使わなくてもいいのが少し気休めにはなっていると思う。 |
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さらに図面を描いている人や製造している人の生活をも考える。実際の製造は中小の企業とも言えないような下請け、孫請けのような零細企業が大多数だろうと思う。中には家族でやっている所も少なくないと思う。暑い盛り、台湾や中国の郊外のエアコンもない工場で、ランニング姿一つで汗を拭き拭き作っているおじさんを想像するだけでも楽しい。家に帰ったら安酒とつまみで一杯やるような事を考えながら作業しているそんな姿が梱包材一つから見えてくるような気がする。 |
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そんな事を考えているとゴミ箱に捨てる度、これら一つ、一つにもいろんな人の生活がかかっているんだなと思う。そうすると何かもったいないような、作っている人達に対して申し訳ないような気分になる。こんな事を考えるのは製造業に携わってきていたせいなのかな? |