カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第178回

清ちゃんのつぶやき(その137)変速性能



 このところコレクションシリーズがないね?とお便りをもらった。忙しくなり、押し入れの奥を捜す時間がなくなってきただけの話である。そのうち、奥の段を漁れば何かしら出てくると思う。もう少し待って頂きたい。多分、まだ公開していない変速機もあると思う。そう言えば数週間前、変速性能を左右する要因は何か?というお便りを続けて2件頂いた。一人は大阪、一人は東京の方である。



 両者共、フレームから組立ててというのではなく、市販の自転車に乗っておられる。走っていて何か変速のキレが悪いと感じてのお便りだった。市販車の場合、コストを抑えるためによくやるのがペダルやシートピラー、スプロケット、それにチェンを低価格のものにアッセンブルすることである。逆に安い自転車を高く見せるために後変速機だけを少しグレードの高いものにするといった手法も見られる。ペダルなどはほとんどの人が違うものと交換する場合が多く、自分でも手軽にやれる改造といったことでユーザーの楽しみにも繋がっている。



 今回はチェンであった。前後変速機、スプロケットは同一ブランド、同一グレードだったのだが、チェンだけは違った。変速機は目につきやすい。その自転車のグレードを計るものさしになる。ところがチェンというのはよく見なければメーカーやグレードが分からない。考えてみれば分かることだが、変速というのはチェンを歯から歯に移しかえることである。歯にぴたりと収まって、歯からスムーズに離れてくれる、それが変速というものである。変速に重要なのはチェンと歯なのである。特に自転車のチェンの場合、一般の機械に使うチェンと違って、捻って使うという特殊な用途のものである。そう考えるとチェンや歯がいかに大切なものかが理解できると思う。



 これは前に勤めていた会社で、よく経験していた。完成車メーカーから「変速がスムーズにいかない」と連絡を受け行く。行ってみると確かにスムーズではない。よく見れば変速機やフリーホィルは我々が販売しているものだったが、チェンだけが違うメーカーのものだった。チェンを持ち込んだ純正のものに交換すると、ものの見事にきちんと変速する。見落とされそうだが、ワイヤーやアウターにも同じことが言える。レバーからの力の伝達をする重要な役目がある。もしこれらがたわんだり収縮したり、伸びが大きかったりすると変速機にうまく力が伝わらない。



 自分を含めて、つい、派手な変速機ばかりに目が行きがちだが、陰の力になっているチェンやスプロケット、チェンリング、ワイヤー類にも目を向けてほしい。歯の形状、材質だけでも変速性能は大きく変わる。変速機だけグレードアップしても変速性能は向上しない。その点はこれを読んでいる方々だけには理解しておいてもらいたいと思う次第である。

第179回へ続く...

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清ちゃんへのお便りをお待ちいたしております。