カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第15回

清ちゃんのコレクション(その4)片倉オーダー車



 これを書くようになって、押入れの奥から一つ、二つとコレクション箱を取りだし、開け始めた。一回目、ゼノアのリヤディレーラーを紹介したが、何とフロントも現れた。新発見である。お叱りをうけそうだが、そんなものである。ちゃんと整理していないからである。フロントディレーラーだけでも30個近くでてきた。多分、その倍くらいはまだあると思う。カンパだけでも40個ぐらいはあるのではないかと思う。その内、本格的に整理しなければいけないと痛切に感じる。



 さて、今回は完成車である。今は亡き片倉シルクのオーダー車である。見ての通り、子供用である。何でこんなものをオーダーしたか?子供がいるわけではない。作る数ヶ月前にフランスに行ったことに端を発する。その時、子供用のブレーキレバーを入手。CLB製である。レバーは2種入手。写真のものより少し大きめのものも入手している。このレバーを帰国後、見つめていたら、むらむらっと自転車を作らなければという気になった。



 どんな自転車を作るか?当時のフランスメーカーのカタログを見ても幼児車のドロップハンドルのものがない。一体、あのレバーは何だったのだろう?とりあえず、16インチで作ることにした。後は部品である。チェンホィル、ハンドル、シートピラー、ブレーキが問題になった。チェンホィルはメーカー車に使われていたアルミクランクのもの。ハート型の穴あけは自分でやった。ハンドルは19ミリ径のアルミ製、特注品である。ピラーはフレームが出来あがってから径を見て、旋盤で削ることにした。ブレーキは引きの軽いものがない。幼児にワイヤー式のブレーキレバーを使わせることに疑問を抱いた。欧州の幼児車はフロントだけキャリパーというのが多い。そんな折、米国ではコースターブレーキが主流であった。これならワイヤーが錆びて幼児の手に負えないこともない。なにより、自分の体重でコントロールできる。ただ、自転車屋さんには置いていないし、メーカー車にも使っていない。作っているところはあった。大阪の南海である。手紙を書いて、一個だけ売ってもらった。



 部品は揃った。あとはフレームを作ってくれるところを見つけるだけである。トーエイも考えたが、忙しい時期に(この頃、納期半年待ちと聞いていた)こんな自転車を頼むのも気がひけた。そこで思いついたのが片倉である。今は所沢で自転車店を営んでいるが、同社には、学校時代のI君がオーダー部門にいた。その前にも、無理を言って、軽量のロードレーサーフレームを作ってもらっている。使用部品とこちらの考えだけを言って、後はお任せとした。迷惑な客である。



 片倉車はこれで4台目である。小径ランドナー、キャンピング、ロードレーサー、そして今回のもの。思うと、片倉には優秀なスタッフがいた。そして、いい自転車を作っていた。ユテクテックの溶接を嫌う人もいたが、個人的には好きだった。



 さて、出来たとの連絡を受け、見てみる。シートチューブには019のステッカー、フォークにはレイノルズのステッカーが貼ってある。クラウンはボカマ、エンドはシマノのトラックエンドである。更にクラウンやエンドには泥除け取り付けのための工作やねじ立てまでしてある。タイヤもフレーム色に合わせてオレンジタイヤが付けてある。早速、I君に電話をすると、「普段、競輪選手やトップアマ、それにマニア相手のものを作っている中で、こんなものが来ると、皆、面白いと言って和やかな雰囲気になった」と話してくれた。たまにはこんなオーダーもいいものかもしれない。

第16回へ続く...

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