カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第136回

清ちゃんのつぶやき(その103)基礎研究



 5月になって暑い日が続く。湿度が低いだけまだましだが、このまま7月、8月になったらどうなるのだろう?等とお客さんと話している。紫外線も強いようで、連休明けに真っ赤な顔をして部品を買いに来店された方も数人。皆さん一応に走り始めは涼しいくらいに感じていたが、途中で夏の日差しになったと話されている。5月という事につい、油断してボトル1本しか持たずに走ってしまったという話も聞く。



 前々回、メーカーへの要望を書いた。実際のところ、今は大変だろうと思う。工場が日本にない所が多い。工場があれば、思いついた時に試作品を作ることだって容易にできる。思いついたものを他人に理解してもらうには、やはり立体的なものが必要である。スケッチ一つでもある程度は理解してもらえる。CADの立体図でも理解はできる。ただ、最終的には立体モデルである。クレイ(粘土)モデル、木型モデル、金属モデル、いろいろあるが、それらを触ることによって他の開発部員や営業部員といった内部への理解を得られる。内部が固まったら、社外の人に見せることができるようになる。



 思いついて立体モデルを作っている内に、これは駄目だ等と気がつく場合もある。頭の中でいいと思ってスケッチを何枚も描き、図面を起こしても、それが形になるに従い、徐々にモノにならない事に気づく場合だってある。これは皆さんにも分かると思う。雑誌の写真で見て、これは良さそうだと思い、ショップに行って現物を見ると、何だこんなものだったのか等と感じることがある。平面上ではよく見えても立体を見るとそうではなかったりすることさえある。



 さて、開発と言っても様々なものがある。単に外見的なものの変更から、全く新しいものまで幅が広い。数日ですむものから何年もかかるものまで、また、何年かかってもモノにできなかったりするものもある。クルマで言えば、新型車と言っても、単にボディ外観の変更から、新しいエンジンを載せた全くそれまでのものとは違うものまで幅が広い。エンジンの開発なんて気の遠くなるような時間が必要になってくる。自転車も同様である。新しいフレームを考えたとしても、単なるパイプの組み合わせですむようなものから、異なった素材を組み合わせて新しい形状のものを作るものでは開発時間が違う。



 部品も同様である。たびたび書くが、ブリヂストンのベルトドライブ、このトランスミッションも実は同社内の他部署で研究されていたものである。自転車の開発部ではない。チェンドライブに代わるもの、チェンみたいに伸びて性能が落ちないもの、注油等のメンテナンスが不要なものと考えて開発されてきたものである。実際に市場に出てくるまでには時間がかかっている。今、市場で売れている電動アシスト自転車だって、ヤマハがオートバイとは全く違った部署で開発させていたものである。



 企業によってはこのように、開発部とは別に研究部門を設け、全く違ったものを研究させているところもある。ものになるかならないか分からないけどもやっている(実際はものにしたいと思っているだろうが)。売れていて、余裕があるからできるのか、余裕があるから売れているのかは定かではない。近年、この会社の余裕みたいなものがなくなりつつあるのではないかと危惧している。だが、この時期だからこそ、このような組織が必要なのかもしれない。同じ会社内でも「あいつら何をやっているんだ?」と言われるような部署があっていい。逆にそのような部署を持っていないところだと、ヒット商品を作ることができない。今、製造業に求められていることがそんなところにあるのかもしれない。

第137回へ続く...

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