カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第134回

清ちゃんのつぶやき(その101)モノ作り



 前回でつぶやきシリーズも100回を迎えてしまった。本当に早いものである。この間、自転車作りに関わっている方々に対してのメッセージも送ってきた。業界関係者の方々でこれを読んで下さっている方もおられることも分かった。今のモノ作りに対しては何か変な方向に向かっているような気がしてならない。もっと原点に立ち返ってもいいのではないか等といつも思っているからである。小手先だけの商品開発があまりにもなされているという感がある。



 ある部品メーカーがこのようなモノを作りましたよと提示する。さあ、それに合ったフレームを考えましょうといったような自転車作りがなされているような感じを受ける。本来、完成車メーカーはどのような人たちに、どのように使ってほしいかという明確なコンセプトを以て自転車作りをしなければならない。そうでないと、とんでもない商品ができる。主導はやはり完成車メーカーでなければならないのではないか、部品メーカーはそれに合ったものを考えだすというのが理想の形であるような気がする。



 例をあげていうなら、以前、コレクションでBSのワンタッチピクニカをとりあげたが、そのようなものである。ワンアクションで折りたためる自転車、それが車のトランクに収まる大きさ、ゴルフバッグと同様のサイズ等、ターゲットや要素を絞り、その人たちにどのような機能が必要なのかを突き詰めていく。そこで折りたたみの機能や機構・構造が考えだされる。その後、どういった部品が必要になるのかという道を歩み、一台の自転車が生まれる。もちろん、順番に進んでいくわけではない。様々なところからのヒントを積み重ねていく。



 パンダグラフ式の折りたたみ機構はBS社内でアイデアがあった。ヒントはいくつかの部品メーカーからの製品である。一番の部品はシマノがやり始めていたフリーハブである。これによって小さい歯が取り付け可能になる。当然、フロントチェンホィルも小さくできる。これはその後、一般車にも流用され、小型のチェンケースになり、スマートな外観になった。いわばトランスミッション系の小型化である。MTBでも数年後、サンツアーがマイクロライトと、この路線を踏襲したシリーズを出し、軽量化したコンポネントを作り上げた。これらは今に至っている。



 話が脱線しそうだが、やはり完成車メーカーがもっと頑張ってほしいというのが結論である。開発に携わっている方々に奮起してもらいたい。スポーツ車や軽快車、子供車や折りたたみ車、もっと情熱をもって取り組んでほしいというのが願いである。もちろん市場の動向というのも大切である。ただ、変な意味でのマーケッティングというか、市場でのいろんな意見を聞くのはいいが、それに振り回され、結果的には面白みのないものになってしまうというのは避けてほしい。



 メーカー間の個性がもっと出てもいい。逆に、それがないと売れない時代でもある。これは自転車業界に限らず、他の業界にも言えることである。不況と言われる時代にも売れている他業種の製品を見て、一応に言えるのはそのメーカーや商品に個性があるからである。その商品の中に秘められている開発者の情熱や会社の方針というのを消費者が敏感にくみ取っているからではないだろうかと考える次第である。

第135回へ続く...

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