「レパルトコルサ」、何といい音の響きだろうか。ある程度、自転車を知っている人にとってはたまらない言葉である。欧州に行くと、自分の自転車の自慢をする時に「レパルトコルサだぜ!」といった表現をよくする。メーカー名ではない。メーカーはビアンキ、その中でトップレンジのものがレパルトコルサである。直訳すると”レーサー部門”となる。他のメーカーでもレーサー部門はあるが、レパルトコルサと言えばビアンキのものに決まっている。 |
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ビアンキが創業して120余年が経つ。創業間もない頃からビアンキはレースに関わってきた。ご存知のようにコッピ、ジモンディ、近年ではブーニョやパンターニといった名選手を輩出している。彼らによってビアンキの名はレーシング魂を持ったものとして世に知られることになる。自社チームを持っていなかった時でも、スポンサーとして自転車の供給をしていたし、常にレースに関わってきた。ある意味、クルマのフェラーリと共通する部分がある。F1レースもフェラーリと同じ歴史を歩んできた。フェラーリを買うということは、単にクルマを買うのではなく、その中に込められているレーシング魂を買うということである。 |
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ビアンキのすごいところはフェラーリと違って、一般車もやっているところである。フェラーリが軽自動車やトラックを作っているかというとそうではない。今、本国ではどうなっているのか知らないが、ビアンキは子供車から運搬車みたいなものまで作っていた。一般大衆車を作っておきながら、その名を生かすために作られたのがレパルトコルサである。ただ、これはトッププロ・アマに供給するものが主である。 |
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ブリヂストンではレーシング部門をアンカーと称して販売している。ある意味、ビアンキのそれと同じである。ただ、ビアンキと違って、ブリヂストンの名は冠さない。アンカーも競輪選手に供給する一本、一本手作りするハンドメイド部門から一般スポーツ車までがある。レパルトコルサも同様である。更に、ビアンキの大したところは自社開発のものだけでなく、他で開発したものも積極的に取り入れていくところである。シートチューブのないカーボンモノコックC4等はそれにあたる。この他にもアルミフレームなどもある。もちろんビアンキの名を冠するからには容赦ないテストが課されるが、それに合格すればビアンキのロゴとチェレステのカラーで発表される。 |
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1990年後半、ビアンキは経営難で北欧のサイクルヨーロッパ社に吸収されてしまった。同社はジタンやプジョーといった会社も吸収して、ブランド権を持っている。一時期はどうなることかと思ったが、ちゃんとビアンキのブランドは残し、レパルトコルサも残してくれている。伝統のチェレステにレパルトコルサの文字、ハイエンドになるとメイドインイタリーのマークが自転車好きを満足させている。なかなか供給が間に合わないのが難点であるが、それが逆にイタリアらしくていいと思っている人も多い。半年以上待って、やっと入手した自転車を前に、苦笑と同時に満足した笑みを浮かべる。そんな人達の表情を見るのが好きである。きっと他の人に自慢する。「これはレパルトコルサだぜ!」 |