カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第130回

清ちゃんのコレクション(その28)シマノ・AXシートピラー



 前回のギドネットレバーであるが、国産でも作っていたというご指摘を受けた。そういえばダイヤコンペで出していた記憶もある。実際、友人が同社のグリップを使っていた。彼もギドネットレバーを使っていたのは一時期だけである。使い勝手が良さそうだと思って使ってみると実際は難点もある。そんな場合、他の物に変えればいい。ところが変えることのできないものもある。今回はそんな例である。



 80年代初頭、シマノが発表したAXシリーズというのがある。エアロダイナミクスをコンセプトに開発されたコンポネントである。ディレーラーを始め、チェンホィルやペダル、ブレーキ、ハンドルステム、シートピラー、ボトルに至るまで、それまでの形式を変えた画期的なものであった。清ちゃんシリーズ、第22回、27回、41回の口絵写真にディレーラーやチェンホィル、ペダルを載せている。個人的に好きなのはペダルだった。踏み面をペダル軸中心に持っていくというのは理想である。今でも同社のペダルやタイム。ルックもそれに近づこうとして工夫をしている。







 さて、そんな気合いの入ったコンポネントであるが、商業的には失敗だったと言われている。規格や互換性というのをある程度、無視したものになっていたのがその敗因である。その頃、ヨーロッパではカンパを頂点とした構造になっており、カンパを無視したものでは受け入れてもらえなかった。シマノが規格や互換性をリードしていくには、少し時代が早すぎたのである。



 短命で終わったAXシリーズであるが、それが残した功績は大きい。センタープルブレーキはカンパのCレコードに影響を与えたし、ディレーラーやチェンホィルもエアロダイナミクスを意識したデザインになっている。また、他のメーカーにもカンパの牙城を切り崩すことができるかもしれないという意識を植え付けさせた功績もある。オフメガやモト゜ロ等、オリジナリティ溢れた、カンパまでもがそれらの影響を受ける、そんな製品が世に送り出されることにつながってきた。



 先に変えることのできないものがあると書いたが、今回のシートピラー、フレームが絡んでくる。AXシリーズのシートピラーには2種類あって、一つは下部が一般的な円筒形のもの、もう一つが今回紹介するものである。円筒形のものは気に入らなかったら他の物に変えればいいが、今回のものはそうはいかない。フレームパイプが特殊になっているからどうしようもない。確か丹下のパイプに合わせたものになっている。フレームもかなりの精度が要求される。サドルが少し曲がっていても円筒形のようにすぐには修正ができない。



 今はフレーム屋さんがそれに合うシートピラーを用意してくれている。おかげでカーボンの素晴らしいデザインの自転車を見ることができる。時代も変わったものである。

第131回へ続く...

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