カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第117回

清ちゃんのつぶやき(その90)マグネシウム合金



 2009年の幕開けである。先ずは、あけましておめでとうございます。暗いニュースの多い中、気分転換するには自転車はちょうどいい。その点、我々はいい趣味を持っていると思う。屋外に出るだけでも違う。さらに同じ趣味の人と一緒に走ったり、話したりすることで気分転換だけでなく、考えていたことの解決のヒントが得られたりする。昔、開発をやっていた頃によくやっていた。



 さて、前回の手入れの中で、大事なのは拭くことであると述べた。拭くだけでいいんですか?という質問があった。厳密に言えば、表面のゴミやほこりを落としてから拭くのである。塗装表面には塗装皮膜を守るため、透明塗料であるクリアをかけてある。これに走った後であれば、細かい砂等が付着している。そのまま拭けばサンドペーパーをかけた状態になって、クリアを傷つけ逆効果になる。先ずは水洗い、もしくははたきをかけて、表面のほこり等を落として拭くのがポイントである。



 要はクリアのその上にワックスで、更にもう一つの皮膜を作ってやるのである。そうする事によって、はたきをかけるだけでも、ほこりは落ちやすくなる。拭いているだけで、部品やフレームの痛み具合もチェックしやすくなる。そうそう、某社のカーボンフレームにクラックを見つけたといった話もこのところ聞く。そんな話を聞くにつけ、カーボン素材があまりにも普及しすぎたのかなという感じも受ける。



 カーボンもピンからキリまであって、すべてが同じ性質を持っているとは限らない。クラックの話は製造過程の問題だろうから、安いカーボンが悪いという事ではない。ただ、一つ頭に置いておいてほしいのは、カーボンはレース用資材の一つであって、まだ、発展途上にあるということである。アルミにもそのような歴史がある。アルミもカーボンも航空機用の軍需用資材だった。それが平和な時代には一般に使われるようになった。考えてみれば、金属の歴史そのものが同じような歴史をたどっている。青銅や鉄、すべて剣や盾に使われ、それが農耕の道具に使われていく。



 今はカーボンがよく使われているが、時折、考えるのはマグネシウムがもっと使われてもいいのではないかということである。メリダのフレームやSRサンツアーのサスペンションフォーク等に使われているものの、もっと普及してもおかしくない。マグネシウムはアルミに比べ、比重が低い。同じ強さであれば軽くできる。カーボンのようにでっかいオーブンも必要はない。ただ、鍛造の場合は工場設備等の問題も出てくる。明治時代の映画等で写真撮影の時、フラッシュをたくが、あれがマグネシウムである。粉じんになると燃えやすい。爆発事故を防ぐため、工場の設置にはかなり厳しい規制がある。



 鋳造や溶接にしても難しい点はあるものの、それはどの金属も同じである。カーボンよりは長期間使えるし、一度、その軽さを知ればマグネシウムの良さを実感できると思う。そうそう、カンパが自動車のホィールを作っていたのだが、それがマグネシウムであった。車輪を外した時の軽さは何とも表現しがたいものがあった。写真はカンパのホィールのセンターキャップである。今回も何かだらだらした内容になってしまったが、今年一年、頑張っていきましょう。

第118回へ続く...

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