カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第342回

清ちゃんのつぶやき(その285) あたりはずれ



 雨が降らない限り、通勤にはバイクを使っている。125ccで燃費は良い。先日、帰宅途中でコンビニに寄った。買い物を済ませ店を出ると、一台のバイクが入ってきた。何と、私と全く同じバイクだった。向こうも気がつき互いに会釈する。自転車も同様だが、バイクも妙なところで仲間意識みたいなものが芽生える。すぐに一言、二言、会話が始まる。いろいろ話していると燃費が違う。入ってきた時の運転をみても乱暴で下手な運転をする人ではない、あたりはずれの話になった。



 工業製品では当たり前の事であるが、製品そのもののばらつきがある。もちろん一定の基準内での話になるが、全く同じものというのはないと言っていい。分かりやすく自転車で例えるならば、フレームとシートピラーの組み合わせがある。27.2と表示してあるとする。もしフレーム内径が27.2ミリ、ピラーも外径27.2ミリぴったりだと入らない。えっと思う人もいるかもしれないが事実である。入るためには隙間が必要なのである。



 そのため、フレームの方は27.2ミリより極わずか大きくしてある。ピラーの方も同様に若干、小さく作ってある。もちろん0.1ミリまたはそれ以下の数値である。具体的に言えば、一つの例として、27.2ミリに対してマイナス0.05ミリからマイナス0.1ミリの範囲内といった具合に製品の寸法が規定されている。ある一定の範囲の数値を公差と呼ぶ。



 同じ工作機械で、同じ素材、同じ条件で作っても、出来あがる製品は違ってくる。削りそのものに関してもチップ(削るための刃)の消耗、素材の取付条件、温度差による素材の伸縮等、さまざまな条件が重なり出来あがったものは全く同じものではない。先のピラーに関しても、ピラーを替えたが、それまでのピラーより少しきついとか、少し緩めの感じがするといった経験をされた人も多いと思う。



 ピラーとフレームくらいの組み合せであればいいのだが、これが多くの部品で構成されていると各々の公差が微妙に影響していく。例えばリヤディレーラーみたいになるとパンタグラフ部のガタといった事にも繋がってくる。そのため、4ピンもあまいもの。きつめのものを組み合わせてからカシメ作業をする。



 トランスミッション自体、チェンとリヤスプロケ、フロントチェンリング、それに前後ディレーラー、チェンジレバーやワイヤーの組み合せである。同じアルテグラと言っても多少の変速の違いは出てくる。機械関係に詳しい人なら理解できると思うが、一般の人にはこれらが理解できていない人も多い。そのため、何で同じ工業製品なのに違うの?といった疑問が生じてくる。以前、大学教授でさえ文化系の人だとその点を理解してもらえなかった事を思い出す。



 エンジンなんてディレーラー以上の部品の組み合わせである。当然のことながら誤差がいくつも重なっていくと、同じ生産ラインで作っていても違うエンジン特性が出てくる可能性がある。もちろん何度も書くように、それは一定の範囲内であって、使いものにならないと云うようなものではない。今は工場内でエンジンの馴らしをやるようでそうでもなくなったが、昔は見た目、同じエンジンでもふけ上がりから、伸び、最高回転数や燃費、全く違うものがあった。それでも今回のようにリッターあたり10km近く違うとやはり「あたりはずれ」ってあるんだなぁと感じる。



第343回へ続く...

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