カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第315回

清ちゃんのつぶやき(その258)なじみ



 しばらく前にTさんからBBの注文を受けた。ところが在庫がないと云う事で数週間経ってから商品が送られてきた。当然、Tさんには入荷した旨、すぐに連絡をした。当日夕方に自転車を持って来られたが、2日後にブルベを控えていた。「今日は取替え、止めときましょう。明後日でしょう?終わってからにしましょう」と伝えた。Tさんもそれなりのベテラン、それにクルマ関係の仕事、こちらの意図するところをすぐに理解してもらい、「そうね、次回来ましょう」でその日は終わった。



 これまでのいろんな経験から、大会や試合の前日や2,3日前に部品を交換して、とんでもない目に遭ったというケースをいやと言う程見てきている。自分自身や自分達のチーム、そして他のチーム、ホビーレース、本当に数多く見てきた。レース前日にコースに合わせ、スプロケットを交換したばかりに、当日歯飛びしてリタイヤした者もいる。当日、スタート直前に不安に駆られ、自分でハンドルステムのネジを増締めしてネジをなめてしまった者もいる。ある程度のチームであれば専門メカニックがいるのでいいが、アマチュアやホビーレーサーだとそうはいかない。



 レース本番前のアップ中に落車したとかの非常事態はともかくとして、部品交換はせめて1週間前までにやっておく事が望ましい。今回、BBだと回転部分、ある程度乗っておかなければいけない。部品にもよるが、新品であれば一度装着して最低でも50kmくらいの走行はしておいた方がいい。それも途中からは少しハード目に使った方がいい。タイヤなら、せめて“皮剥き”は最低しておかねばならない。特に初期緩み、初期伸びに対しては機械関係の仕事に従事している人なら、その重要さを理解しているが、一般の人にはなかなか分かってもらえない。買ったばかりなのに・・・と自転車を持ち込まれる時もある。「ネジは緩むもの、ワイヤーは伸びるもの」という意識も必要になってくる。



 クルマやバイクなどでは馴らし運転というのがある。「ならし」とは何かと云うと、新品の機械の部品を組み合わせた場合、それら一つ、一つに微妙な誤差がある、部品によってはプレス等の小さなバリがあったりする。動かす事によってそれら相互の「なじみ」を行うわけである。「当たりをつける」とも言う。最近のクルマのエンジンなどでは工場で馴らしをやっているので、購入してすぐに全開にしても構わないと言うが、自分としては信用できない。やはり最初はゆっくりと、徐々にハードにと自分好みのエンジン特性に仕上げていきたい。



 自転車も同様で、新品部品同士だとなじむのにちょっと時間を要する。例えばチェンとリヤの歯など、新品の時より若干使った後の方が変速にキレが出る。バレル研磨等やってバリ等は取り除かれているはずだが、目視では確認できないような微妙な凹凸があり、それが取り除かれる事によってスムーズさが出てくる。ちなみに歯形状にシャークトゥース(鮫の歯)が紛れているが、それなどはなじみを出した歯の形状であり、ノーマル歯を使い込んでいけば、自然とそんな形になってしまう。昔の人にだけ理解できる形でもある。



第316回へ続く...

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