国道3号線に三太郎峠と呼ばれる所がある。熊本県南部、八代から水俣に至るまでに三つの峠があり、それを総称して三太郎峠と呼ばれる。それぞれ、北から「赤松太郎」、「佐敷太郎」、そして「津奈木太郎」である。江戸の時代から交通の難所として有名だった所である。熊本から鹿児島まで行くのなら通らざるを得ない所でもある。ただ、現在は八代からは自動車専用道が南に延びている事もあり、クルマなら通らなくともいい所も増えてきた。それでも自転車だと通らなければいけない。今はトンネルも拡張され、路面も良くなってきたが、少し前までは狭くて暗い、濡れた所もある悪い路面のトンネルを、後ろから来るトラックを気にしながら怖い思いをして走らなければならなかった。 |
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ある日、何気なく地図を見ていた。そう言えば、このところ南の方には行ってないなぁ等と思っていた。それでも日奈久から先は赤松太郎があるし、きついもんなぁと考えていたら海沿いに道がある。道路地図だったのだが、“軽自動車のみ通行可”と記してある。なんだ、それなら自転車で通れるじゃないか、わざわざ、きつい赤松太郎を登らなくてもいいじゃないかと思った。なぜ今まで気がつかなかったのだろう、誰も教えてくれなかったし、サイクリングロードがあるなんてガイドブックにでも載せていればいいのにと思った。 |
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そう思った次の連休、出かけた。八代からは先に書いた自動車専用道ができているためか、交通量が以前に比べると大幅に減っている。おかげで国道3号線が自転車にとっては走りやすい道になっていた。日奈久を過ぎると、肥薩おれんじ鉄道の肥後二見駅(小さな駅舎でかわいい)が右にあり、そこから海沿いに道がある。確かに狭いが普通車でも行けない事はない。右側に線路と海が見える。天気もよく、遠く天草の島々も見える。ルンルン気分でくまモンの唄を歌いながらペダルを踏む。途中から線路の向こう(海側)に道を作っている。これができれば軽自動車でなくとも通れるようになるんだな等と思い何度か小さな踏切を越えながら進む。 |
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しばらく行くと海から離れる道になる。これさえ越えれば田浦の町だ、へへっ、地図で見ても距離は短い、楽勝だと思いながら上る。最初はきついがすぐに勾配が緩やかになるのだろうと思いながら上っていくが、あまり緩くならない。こんなバカな、予想と違う、下りかなと思わせてまた上り、途中、休憩してしまった。そんな事を繰り返しながらやっと頂上付近、下り始めて分かった、そうか御立岬に行く道だったのか、急な勾配を下ると3号線に合流した。道の駅があるので小休止。3号線を通った方が楽だったかもしれない。 |
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実は3号線に合流するちょっと手前に赤松太郎峠に向かう道がある。昔の道なので勾配は緩やかである。ただ、その分、直線路は少ない。次から次にカーブが続く。農作業の生活道路として使われているためか路面は比較的いい。途中、首塚の史跡もある、やだよなぁ、そんな道を延々と上っていくと着いた。あっけない頂上である。広い切り通し、採石場があるだけ。風情はないが下っていくと集落が見える。二見赤松の集落である。 |
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辺りは黄色い稲穂に真っ赤な彼岸花が咲き誇っている。ここに来ると“薩摩街道御籠据所跡”とかの表示や石の道標がある。そうか、ここは江戸に時代の道でもあったんだと気づく。集落には小さな石橋がいくつかあり、一つ、一つに説明板がついている。上部がコンクリートで覆われていたりするので、見落としそうになるが、逆に考えれば江戸時代の小さな石橋が今でも使われているのである。農産物や農作業の機械を積んだトラックが200年以上も前に作られた石橋を渡っている。住んでる人達には極、当たり前の景色なのだろうが、これはすごい事である。橋の下を覗いて見ると小さな魚が群れをなして泳いでいた。 |