カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第269回

清ちゃんのつぶやき(その218)ミキスト



 今、一台の自転車を預かっている。かれこれ20年ほど前の自転車である。それ自体は珍しいことではないのだが、今回はミキスト車である。修理内容はオーバーホールだが、フロントはダブルギヤ、直付けのセンタープル・キャリパーブレーキ、キャリア直付けライト、分割マッドガード、ランドナーバー仕様のツーリング車である。預かったのは少し前だったが、数台の自転車が修理に入っていた事もあり、やっと着手することができた。現在、部品を外しフレームだけにして磨いている。部品もフレームに付けるBBやヘッドパーツのグリスアップが終わった程度である。完成車になるにはもう少しかかりそうである。



 ただ、見ていると、この手の自転車、本当に少なくなってしまったなぁと思う。昔はランドナーをやっている完成車メーカーには必ずと言っていいほどミキストもラインナップされていた。フロントはシングルと言うのが多かったが、時には今回のようにダブルギヤで、ダイヤモンドフレームのランドナーと装備がほとんど同じというものもあった。それにしても、改めて見るとミキストのフレームワークって美しいと感じる。



 ミキスト、6本バックとも呼ばれた。見て分かる通り、チェンステー、シートステーの間に更に2本のセンターステーが入っていることによる。リヤエンド部への溶接が多く、逆にそのエンド処理がメーカーやビルダ―の一つのセンスになっていた。見た目の一番の特徴はセンターステーがヘッドからエンドまで一直線に続くことである。もちろん、これも途中で少し絞っていたり、若干のアールをつけていたものもあったが、多くは一直線だった。これは久しぶりに見るからだろうか、今みると非常に斬新に映る。細めのセンターステーには強度やねじれを補うために数か所のブリッジが溶接されている。このブリッジ類もビルダーによってはワンオフで手作りされていたものもあった。



 また、そのフレーム形状からブレーキワイヤーの処理の仕方も数種あった。フロントは全く問題ないのだが、問題はリヤである。簡単なのはサイドプルキャリパーを使い、アウター受けを下にしたものを使う事(今もフリースタイルBMX系の自転車には使ってある)だが、をこれがセンタープルのキャリパーやカンチだと面倒な処理が必要になってくる。今回のものはプーリー(滑車)を使いセンターステーから一旦上部にもってきているが、細いパイプを溶接したワイヤーリードを使ったりしていたものもあった。また、シートステーではなく、センターステーにブレーキ本体を付けているものもあった。



 いずれにしても、ダイヤモンドフレームにはない各種の難しさがミキストにはあった。それを克服するためのアイデアも当時のビルダーやメーカーにとってはやりがいがあった事だろう。今回のミキスト車のオーナーは高校生の子供を持つお母さんである。子供ができてからは乗っていなくて放置されていたものである。ご主人もランドナーに乗られていて二人で走った思い出も今回の自転車には入っているものと想像する。一応、完成車になった時点でオーナーの了解を得たならば写真を撮って後日、掲載したい。それにしても26×1ー3/8のスポーツ車用タイヤ、なくなったよなぁ・・・。



第270回へ続く...

目次

清ちゃんへのお便りをお待ちいたしております。