今回は自転車でなければ行けない温泉の話である。別に自転車でなくとも行けるのだが、途中からはクルマでは行けない所にあるからである。徒歩という手もあるが、歩くと幹線道路からは1時間くらいかかる。場所は霧島の一角とでも言っておこう。霧島市とえびのを結ぶ県道1号線から入った林道から行く。林道と言っても舗装されているし、そうでない所も踏み固められているので一般車両でも通れる。サイクリストならば県道沿いに駐車場があるのでそこから行った方が楽しめるかもしれない。 |
|
|
ただ、一言断っておくが、現在は途中からは立ち入り禁止である。県道から約4キロ、山道を走ると少し広い十字路がある。右手の道にだけゲートがある。そこからは一般車両は立ち入ることができない。もちろん人も通ってはいけないのだが柵の右手には人が通れるようになっている。そこから約1キロ余り、橋(昔は赤い橋だったのが白い橋になっていた)の先、左手に湯けむりが見えてくる。その手前あたりから硫黄泉独特の臭いがするので分かるだろうと思う。 |
|
|
そこからは徒歩、少し下れば別世界である。川の中から湯けむりが立ち、川の水も本当に水色である。もちろん料金所もなく、更衣室なんかあるわけがない。そこら辺りの木に服を掛けて川の中に入るのである。大自然の中ですっぽんぽん、開放的な気分を味わえる。湯船はというと、先人達がうまく石を並べ湯船をいくつも作っていてくれている。場所によってはお尻のすぐ下から熱湯が出てきているので要注意である。熱ければ石を少し動かし川の水を多めに入れながら調節する。 |
|
|
こんな、いわゆる野湯だが立入禁止になったのには理由がある。途中の看板にもあるように硫化水素ガスが強い時があって中毒、最悪の場合は死に至る。今でもそうだが、硫化水素泉の多くは露天、もしくは湯小屋があっても天井が高く作ってある。その上に最低2方向に窓が取り付けてある。寒いからといって冬場に窓を閉めてしまうとやられてしまう危険性がある。最近はそんな事も知らない人も多い。露天風呂を売り物にしている旅館や施設があるが、単純温泉で露天にしても意味がない。単に開放感を味わうためだけである。 |
|
|
もう一つの理由には林道にあたりかまわず駐車して営林署の作業車の妨げになるケースが増えたためである。MTBの流行りはじめた頃、登山道を我がもの顔に走りハイキングの人に怪我を負わせた。当然、その道は自転車立入禁止になってしまった。人の迷惑を顧見ずに行動をするとそんな結果になってしまう。 |
|
|
10年程前には今回の“山ん城温泉”もクルマで行く事が出来た。実際、野湯なのに名前が付いているという事はそれなりに皆に親しまれていたからである。それが少し前の温泉ブームでいろんな人が知って来たからである。何事にも他人に対してのマナーは必要である。尚、硫化水素ガスであるが、風の強い日や霧島温泉街でその日のガス情報を仕入れれば大丈夫であるものの、立入禁止区域内はあくまでも自己責任という事を肝に命じて行動してほしい。 |