カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第220回

清ちゃんのつぶやき(その173)ツーリング車(新春スペシャル)



 あけましておめでとうございます。この一年も皆さま方にとって良い年になるよう願っております。さて記念すべき2011年、元旦、今回は新春スペシャルでこれまでツーリング車について語った事をまとめていきたいと思います。



 昨年、ツーリング車のブームが各所で見受けられた。新刊がいくつも発行されたし、自転車とは関係ない雑誌や新聞、TVとマスコミに取り上げられる事も増えてきた。店での接客時にもそれらを感じることができる。一昨年頃から健康志向という目的で自転車を購入する人が増えてきた。ところが走っている内にだんだん面白くなり、走行距離が徐々に延びてくる。それがエスカレートして1泊、2泊の旅行に目覚め、それ専用の自転車が欲しくなってくる。そんな人も増えてきた。知らない所に行ってみたい、もっと遠くに行ってみたい。このような好奇心、人間が持つ本能かもしれない。



 初心者だが、どんな自転車がツーリングに向いているのかと云った内容の質問も受ける。どのような自転車でもツーリングはできる。実際、ママチャリで日本一周している人もいるし、何度か並木坂店や浄行寺店の時にそんな人達の自転車も修理した。時にはあと数週間しかもたないだろうと云うのもあった。ただ、自分を虐めるのが好きだというのなら別だが、快適な旅とは縁遠い。走っていても自転車のトラブルばかりではせっかくの旅も台無しである。やはりトラブルのことを気にせず、快適な旅をするためには自転車選びが重要になってくる。



 どんな自転車がツーリングに向いているのか?と言うと”その人の旅の形態による”としか言いようがない。肝心なのは”どのようなツーリングをしたいのか”という点を明確にすることである。何泊程度のものなのか、荷物はどのくらいなのかという点をはっきりさせなければならない。700×23Cのタイヤを履いた自転車でサイドバック4個なんていう装備はさすがにないだろうが、そこまで極端でなくとも見ているとそれに近い人達もいる。結果、スポークが折れたり、走っている内に疲れが溜まってくるといった現象が起こる。



 ツーリング向きの自転車が競技用ロードレーサーや他の自転車と違うのは、フレームの設計である。設計もツーリングの形態によって全く異なってくる。片道10キロ程度の短い距離であればホームセンターで売っている6段ギヤ付きの自転車でも走れる。ところがツーリングのように、時には100qを超える距離を走ろうと思う場合にはフレームの設計が重要になってくる。もちろん体に合ったという意味だが、長い時間、運動しながら、荷物を積んで走るわけである。ホィールベースは長め、シートアングルは寝気味、ヘッドアングルやフォークのオフセットも異なる。上りでも立ちこぎをしてがんがん走るのではなくシッティングで踏み込むような走りになる。



 もちろんロードレーサーでも荷物が少ないのであればツーリングはできる。小型のフロントバックやサドルバックを装備できるし、足りなければシートピラーに取り付けできるキャリアだってある。荷物が増えるのであれば、ブレーキとの隙間の余裕を見てタイヤも25C以上のものを履いておけば安心かもしれない。



 同じロードレーサータイプでもツーリングに適したものもある。簡単な見分け方としては後タイヤとシートチューブの間隔である。店に飾ってあるロードレーサータイプのものは皆同じように見えるが、その点を注意して見てほしい。小指一本も入らないようなものと指二本入るくらいのものがある。これはリヤセンターの長さの違いである。長いものはホィールベースも長く設定されていると思って間違いない。そのような自転車の中にはリヤエンド部にキャリアや泥除け用のネジ山があるものもある。そういったものであれば後々ツーリング用に改造もできる。



 このようにその装備にあった自転車と云うものがある。同じ1週間のツーリングでも宿泊にビジネスホテルや民宿を使うなら荷物も少なくて済む。その場合だと細めのタイヤでも大丈夫である。ところが、キャンプ道具を積んでいくのなら装備が違う。テントやシュラフ、マットやランタン、バーナーにコッフェル、それ相当の荷物が増える。たくさんの荷物を積むのなら太いタイヤのものを選ぶべきだろうし、フレームもそれ用の設計になっているものを選んだ方が快適である。そんな自転車はフレームパイプも厚めの丈夫なもの、スケルトンも更にシートアングルを寝かせたり、ホィールベースを長くとってあったりする。



 今のランドナーやスポルティーフブーム、全国のフレームビルダーが忙しくなり納期1年というのもざらである。詳しく聞くと、市販しているランドナーやスポルティーフが少ないという状況がある。市販品があればそれを購入する人が、わざわざオーダーという手法をとっている。本来オーダーしなくても済む層の増加のせいである。ところが、意外とツーリングに使える自転車も探してみればある。



 ここでカガワの自転車で現在入手できるツーリング車を20台程リストアップしてみた。もちろんこれ以外にもある。条件としてはドロップハンドル、フル泥除装備(または後付できるもの)といった事に加えてフレームスケルトンがツーリング向けという事にした。フラットハンドルでもツーリングはできる。ただ、握る部分が一か所なのでどうしても長距離では疲れてしまう。エンドバーを装備(ツーリストの中ではブレーキレバーの内側に取り付けている人もいる)してもドロップハンドルにはかなわない。



 もし本当にテントを積んでの長距離の旅をしたい、荷物も多いというのであればジャイアントのグレートジャーニー1、2、それにルイガノあたりで゛あれば安心できる。クラシカルな外観を求めるならばアラヤや丸石のランドナーだってある。アラヤやビアンキのスポルティーフも魅力的である。外観はクラシカルだがパーツやパイプは現在のもので安心できる。どんな車種がどんなツーリングに向いているかはタイヤサイズを見て欲しい。タイヤサイズでその自転車が判断できる。同じ700Cでも太さが違う。太ければ多少荷物が増えたって平気であるし、細ければその分快適な走りを考慮した自転車だと思って差し支えない。



 車種や色、サイズによっては納期に時間がかかるものもあるが、現在入手できるものである。また、幸いなことに2010年モデルがまだ残っている場合もある。詳しくは各店の担当者に尋ねてほしい。また、手持ちの自転車をツーリング向けに改造できないかといった相談にも応じている。先に書いたように、知識がなくてロードレーサーにテントや寝袋を積んで自転車にトラブルが生じた、疲れたというような事がないようにアドバイスもできる。新しい年、知らない土地が貴方を待っているかもしれません。楽しく、快適なツーリングの第一歩をスタートする絶好のチャンスかもしれません。



第221回へ続く...

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