カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第212回

清ちゃんのつぶやき(その166)大衆食堂



 前々回、四国にいったことを書いた。その時に港町にでさえ大衆食堂がなくなっているとも書いた。昔は本当にたくさんの大衆食堂がいろんな所にあった。自転車で旅行していると体を常に動かしているためか、よく食べる。一日5食も珍しくなかった。常に空腹状態という時もあった。そんな時に良く利用していたのが大衆食堂やドライブインである。そう言えば、今はドライブインという名称もあまり聞かなくなった。小さい食堂で5つばかりのテーブルとカウンター席、おじさん、おばさんの二人(プラス一人ぐらい)でやっていくのには手ごろな広さの店が多かった。



 ファミレス等と違って全部自分のところで作るので店によって味もさまざま、地域によって当然、食材も違う。それも楽しみの一つでもあった。量も値段の割にはボリュームがあったりする。それに店の人やほかの客との会話も多かった。走っていてトラックがたくさん停まっているドライブインなどは狙い目で、安くて量が多く、美味い店だと思って間違いなかった。そう言えば、東日本ではどうだったか思い出せないが、西日本では「めし」という大きな文字の看板がよく目についた。



 自転車を店の横に立てかけ、店に入る。定食を注文すると「どこから来たのか?どこまで行くのか?」のお決まりの質問がある。そこで話を始めると、場合によっては周りの客が次から次へとその会話に入ってくる。そこでこれから先の道路状況や宿情報、地元の人しか知らない穴場スポットとかの話を聞いたりする。そう言えば何度か知らない人が食事代を支払ってくれたり、注文もしないのに大盛りにしてくれていたりと親切にしてもらった。ファミレスや普通のレストランや食事処ではなかなかないことである。まだ若かったせいもあるのだろうが、人の親切心が身に沁みた事が何度もある。



 かく言う自分の住む町の大衆食堂も最近消えた。ご主人の老齢化のためである。確かに自転車で旅行していた頃もおじさん、おばさんでやっていたり、おじいさん、おばあさんでやっていたりした。時が経ち、その人達が老齢化してきても当然である。若い人たちは店を継がない。また継いだとしてもちょっと洒落た店に改装していく。大衆食堂の「大衆」という言葉も今になると何だか懐かしい響きがある。近年、旅行していてもこんな店がかなり減ってきた。



 それでも朝の港町で湯気の漏れる小さな食堂で食べる朝食はどこも美味しかった事を思い出す。味噌汁なんて具は何でもいい。たくさんの量作る味噌汁はとにかく美味しい。寒い時期の豚汁なんて最高である。あったかいご飯と味噌汁、たったそれだけで一日への活力が漲ってくる。コンビニでの朝食は温めてもらっても何か味気ない。食べる、ただそれだけの事であるが、空腹感を満たせばいいというものではない。やはり作る人の味がプラスされなければいけない。その味の事を “人間味” と言う。



第213回へ続く...

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