先週、日産がタイ工場で造るマーチを一部、日本に輸入するとの報道があった。製造業大好き人間としては、ついにこの時がやってきたかという想いになった。輸送機器では自転車より少し早くスクーターが輸入されていた。台湾製のスクーターなんて、日本の冬にちゃんと走るの?と行きつけのバイク屋で話していた記憶がある。当時、各メーカーでは東南アジアにノックダウンする製造工場を持っていた。もちろん現地販売のためではあるが、そこから価格競争の激しい日本へと一部が輸出された。 |
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電化製品ではもっと早くからサンヨーやシャープあたりが東南アジアに工場を造って販路を拡げていたのはご存じの通りである。15年以上前の電化製品の箱にはすでにそれれらの国の製造表示がしてある。衣料に至っては韓国や中国が当たり前の時代になっていた。シマノだってシンガポール工場はかなり早くからあり、廉価ものの商品を造っていた。我々が日常使っている生活用品、そのほとんどがかなり以前からメイドインジャパンではなくなってきていた。 |
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話をクルマに戻すと。各メーカー、中国をはじめ、東南アジアに工場を造り始め現地生産を余儀なくされていた。輸送費を抑えるためにヨーロッパやアメリカに工場を造るというのはそれ以前になされていたが、東南アジアのそれは低価格の労働力、需要が頭打ちになってきた日本国内でなく、これから発展していくであろうマーケットを睨んでのことであった。 |
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先に書いた衣料や電化製品はともかくとして、クルマはメイドインジャパンを貫いてきた。もちろん、一部の部品は輸入ものを使っていたが、組み立ては日本だった。近年、派遣切りなどの問題はあったものの、ある意味、日本の製造業を支えてくれていた。ただ、いずれ東南アジアの国々からクルマを入れてくるのだろうなあ等と思っていた。それが今回、日産の発表を聞いて現実のものとなった。中国製のアコードやカローラといったものが入ってくれば今のベーシック軽自動車より安く販売できるようになるのは確実である。 |
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オートバイだって、乗ってみたいなと思えるようなものは100万円を超える価格になってきている。日本で製造されているものは総じて高価格になっている。考えてみれば我々が今乗っている自転車、ある意味、安いのかもしれない。25年前のスポーツ車、8万円のスポルティーフと同じようなものを今、造ると16万円では出来ない。そんなことを考えると東南アジアからの輸入というのも助かる。カーボンフレームやパーツなどもイタリア製と思っているととんでもない。中国で造りイタリアに行き、そこで少し加工したりしてメイドインイタリーのステッカーを貼っている。そんな現状である。 |
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急激な円高による混乱もあったが、1ドル90円が安定してきた。低価格で求めやすくなり、円高の恩恵に与かれることは喜ばしいことであるが、今一つ、何かしらの寂しさが残る。日本から工場が徐々に消えていくのは何か悲しい思いがする。 |