カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第170回

清ちゃんのつぶやき(その129)本その2



 165回でカンパの本を紹介した。少しがっかりしたのには訳がある。実は以前に買っていたカンパの本の日本語翻訳版だったからである。カンパ75周年を記念して2008年に発行されてものがベースである。原タイトルは”75 years of cycling passion”(自転車の情熱にかけた75年といった意味)である。片や、日本語版は”自転車の歴史を変えたもの”といった意味で、違う内容だと勘違いしていた。ふっと思い出して以前の本と並べ比べてみたら、あら不思議(でもないか..)、チャンピオンラインの位置まで同じ、ラインの下タイトルのみが違うだけである。



 内容も確認しないで買った自分が悪かった。そんな反省をしながら数日後、久留米の知人宅に行った。そこで見せられたのが今回の本である。原タイトルは”The Golden Age of Handbuild Bicycles”、”手作り自転車のすばらしい時代”とでも訳せばいいが、ぺらぺらとめくっただけでもなかなかの内容だった。1900年初頭から現代に至るまでの様々なハンドメイド自転車が50台程紹介されている。写真を見るだけでも楽しめる。早速、言われた通りインターネットで調べて入手した。



 表紙はルネルスのランドナー、これだけでも魅せられるものがある。単なる回顧趣味のものばかりではない。最近のものは2003年のアレツクス・サンジェ、これなどはカンパのエルゴパワーやビンディングペダルといった現代のパーツで組まれている。解説も分かりやすい英語なので中学生程度でも読めると思う。それにしても感心するのは我々、自転車小僧が1960年代や70年代に熱中したランドナーの原型がすでに30年代に確立していたことである。また、これまで知らなかったフレームビルダーや名前は知っていたが作品を見たことがなかったビルダー達も紹介してあり、なかなか興味深い。



 どうしてもルネルスやサンジェが有名で、それらが目を引くものの、その他にたくさんのすばらしいビルダーがいたことを認識させてくれた。そう言えば昔、フランスに行った際、いくつかの無名なビルダーの店(工房)に行ったことがある。フランス語しか話せない人が多く難儀したが、こちらの片言のフランス語での会話でもモノ作りに対しての情熱は十分に感じさせてくれた。そんなことを思い出してしまう。今、考えると写真をたくさん撮っていればよかった。



 フランスのスポーツ車の歴史の奥深さというか、今のように部品メーカーに頼らず、ない物は自分で作り出すといった気風が本からも感じられる。ルネルスがチェンリングやステムを自作していたが、なぜそうだったのかが理解できるような気がする。ルネルス以外でもブレーキアーチ等の部品や様々な小物も手造りされている。職人達の自転車の速さや軽さを追求した結果の優美さ、そんなものをこの本は教えてくれる。価格は4000円余りだが、この本に関して言えば決して高くはない。

第171回へ続く...

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