カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第146回

清ちゃんのつぶやき(その110)ラグ



 九州の方はなかなか梅雨が明けない。じとじとした梅雨のイメージではなく、集中豪雨みたいな梅雨である。休みの日、自転車に乗れないサイクリストも多いのではなかろうか?そんな中、紙袋に包んだラグや小物が数点出てきた。生地のままなので表面は錆が出てきている。



 今では、TIG溶接が主になって、なかなかきれいなラグを見る機会も少なくなってしまった。おかげで単なる丸パイプだけでなく、自由な形のパイプが作れるようになった利点もある。これはこれできれいだなと思えるものも多い。パイプとパイプをつなぐのにはいろんな方法がある。溶接や接着、繋ぎの部分をダイキャストで固めてしまう製法だってある。



 溶接にしても直接パイプ同士を溶かしてくっつける方法もあるが、自転車では高温による材質変化をきらってロー材と呼ばれるものを仲介してくっつける。これは自転車用のパイプが1ミリにも満たない薄くて、デリケートな素材でできているためで、ハンダ付けみたいなものと考えれば分かりやすい。ある意味、TIG溶接だって一種のハンダ付けみたいなものである。



 さて、そのロー付けだが、ラグを使用しないラグレスというのもある。これはこれで作る人が上手ければきれいなものができあがる。個人的にはラグを使ったものが好きである。以前はいろんな形のラグがあった。唐草模様のコンチネンタルラグやその変形ラグと、ラグ一つ選ぶのにも苦労した。今ではシンプルな形のイタリアンカットラグがメインになってしまった。人間の素晴らしいところは、単なる中間継手であるラグを素材の要素にしてしまうことである。水道管見たいな形でもすませられる。それをあれやこれやと手を入れ、それ自体を芸術の域にもっていってしまう。



 かってはプレスラグがメインだったのが、ロストワックスと呼ばれる精密鋳造のものになってきた頃、少しがっかりした。原因はその重さである。確かに造形としてはきれいである。ただ、シートステーの上部など明らかに重たくなった。職人さんがステーを斜めにカットし、それに合わせたふたを作りくっつける。そんな仕上がりが好きだった。手はかかるけれど、いかにも人間の手で作り上げたという感じを受けた。ふたが微妙に曲がってついているのも愛嬌に思えた。



 昨年あたりからクロモリパイプの自転車が少しずつ増えてきた。ある意味、楽しみである。ラグメーカーも国内ではなくなってしまった。それでもラグメーカーが消えてしまったわけではない。国内でもまだオーダーメーカーがある。これからも芸術品と思えるようなラグワークを見続けていきたいものである。

第147回へ続く...

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