カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第143回

清ちゃんのコレクション(その31)タンデムクランクセット



 コレクションの中に写真のクランクセットを見つけた。一見、右クランクが二つ、左クランクが一つのように思える。ところが右クランクと思われるものが左クランク、左クランクと見えるのが右クランクである。これはペダルねじをみれば分かる。これはタンデム用のクランクセットである。



 タンデムと言ってもほとんどの人はピンとこないかもしれない。それはそうである、日本では二つのサドルを有していても二人乗り禁止である。また車両長さも違反している。タンデムに堂々と乗れるのは一部の観光地とか、何とか公園内の限られたコースである。インカレではタンデムのスプリントとかもあったが、タンデムに公道で実際に乗った人は少ないのではないだろうか?



 一般公道で(いつの頃だと言われそうだが)乗ってみると、その速さに驚く。ツーリング用のタンデムでも少し踏み込むとロードレーサーでもついていくのに相当苦労する程である。この感覚は実際走ってみないと分からない。二人分のパワーが一つの自転車を動かすのに使われるのである。遅いはずがない。ただ、唯一の弱点は上り坂である。二人の呼吸が合わないと上りづらい。またコーナーもホィールベースが長いため、最初は戸惑うことがある。



 タンデムのドライブトレインにも数種ある。後輪の駆動を前席の右にもってくるものや後席の右にもってくるものとある。前者にも二つの方式があるものの、いずれにしてもチェンの長さが長くなる欠点を持っている。そのためチェンテンショナーを備えたものになる。今回のものは後者用である。このためフロントチェンホィールは一般のものが使える。今、欧米で乗られているほとんどのものがこの方式になっている。左は同じ歯数のもので連結されている。これもチェンが伸びた時に、たるみをとるためにエキセントリックハンガーを採用したりしていたが、工作に費用がかかるため、今ではほとんどがチェンテンショナーを使っている。



 この他にもタンデムには特有の部品が使われる。フレームパイプや車輪も強度のあるものが要求される。二人分の重量がかかるのだからストッピングパワーも相当なものである。マファックでは長いシューのカンチブレーキを作っていた。それに変速やブレーキのワイヤーも長いものが必要になってくる。そう言えば、関東にいた頃、ママチャリにブルホーンハンドルを付けようとした時、ブレーキワイヤー長さが足りなくなった。何かの機会にCWSに行ったら、タンデム用のワイヤーがあった。聞くと同じような改造をする人が時々いるのだそうだ。



 アメリカではイベントなどで、リカンベントやタンデムに乗って参加している光景を見かける。どちらにしても日本ではあまり見かけない。交通事情もあるが、乗ってみないと分からない乗り物も多い。チャンスがあればそれらに一度トライしてみる事をお勧めする。

第144回へ続く...

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