先日、ふっと出てきた一つの箱。シマノサンテである。もう知っている人も少なくなった。このコンポ、1987年、今から約20年前に出た。番号は5000番、デュラエース、600(今のアルテグラ)に続く番号であることから、105より上級コンポと位置付けられていた。ただ、105を含め、レーシングコンポとなっているのに対し、少し味付けが違う。少しパールがかった白を基調としてある。デュラエースと同じようにシマノの文字は表面には見あたらないようになっている。 |
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このコンポは純ロードレーサーコンポとして開発されたものではない。女性やそれまでロードレーサーの持つメカメカしさにアレルギーを感じている人達向けのコンポである。今、考えると時代が少し早すぎたのかもしれない。現在、環境問題や健康問題と、自転車に乗ろうとする人たちも増えている。どうせ乗るならカッコイイのをと思うのだが、初心者や女性だと外装変速機の金属むき出しやブラックパーツに抵抗を感じる人たちもいる。特に女性の場合、初めてのスポーツ車だと選ぶ基準はフレームカラーやデザインというのが多い。 |
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そんなことを考えていると、今の時代に通用するのではないかという気もする。サンテという名もぴったりである。フランス語で健康を表す。同国では”乾杯”時には”サンテ!”と言う。残念ながらこのコンポは短命であった。2年後のフルモデルチェンジ時には消えた。 |
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ちなみに塗装を施すというのは、その頃、研磨工賃が高くなって、塗装という手段を使わらざるをえなかったからかもしれない。実際、600や105シリーズもシルバーやガンメタ塗装だった。今もそうであるが、黒塗装のものにはデザイン面とは別に、コストを抑えるという面もある。シマノも新しい表面処理を模索していた結果かもしれない。 |
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ただ、その試みは面白かった。個人的に気に入っているのはリヤディレーラーの上下のプーリー歯数が違っており、コンパクトにまとまっている事、そしてそのプーリーをできるだけ見せないように、Cレコードのようなカバーされたデザインがされている事である。もちろんHとLの調整ボルトもサイドから見えないように工夫されている。機構としては、サンツアーのパテントの切れたスラントパンタ機構を採用し、ガイドプーリーにはインデックスの微調整のためのセンタロン機構、それに初のセラミックブッシュが使われている。フロントディレーラーも斜め移動の、いかにもアウターからインナーへチェンを押し下げますよといった機構のものだった。 |
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他のチェンホィルやブレーキは個人的には好きになれなくて、前後ディレーラーとチェンジレバーだけを購入していた。その内に、軽量スポルティーフを作った時に使おうと思っていたものである。リヤディレーラーで190gを切っていた。結局、そのままスポルティーフも作る事なくコレクションの箱の中に入ったままである。こんなパーツが本当にたくさんある。使うつもりで買っていながら眠ったままである。先日、古くからの知人にそんな事を話したら、「無駄酒やギャンブル、女遊びに使って何も残っていないようなものと違って、ちゃんと形になって残っているからいいじゃないか」と慰められた。考えようによっては健全(?)な趣味である。少なくとも、パーツを見て、その頃の事を思い出すことができる。 |
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